海と月のリズム

明治5年にグレゴリオ暦という新暦が採用されるまで、私たち日本人は新月を迎えるごとに月が変わる旧暦を、つまり月のリズムを感じながら大自然と調和した生活を送ってきました。新月の日が1日なので、満月は15日頃になります。

満ちては欠ける月は、29.5日をかけて地球をぐるりと一周します。このリズムは女性の月経周期と同じリズムです。

また、海の生物には満月と新月のときに生殖活動を行うものが多く、珊瑚やウミガメは満月の日に産卵をします。人もまた満月と新月のときには出産件数が増えると言われています。「大潮の日は出産が多い」と言われるのは、満月と新月には、地球と月と太陽が一直線に並ぶことで月と太陽の引力が働き、潮が最も満ちる「大潮」と呼ばれる状態になるからです。

人間の体は60%以上が水分。妊婦さんのおなかのなかの羊水は、太古の海水の成分とほぼ同じとも言われています。地球最初の生命体は原始の海の中で誕生しました。やがて海から陸へ上がり、人間へと進化しました。体液が海水と似ているのは、その名残です。わたしたちは、身体の中に海を抱いています。

大きな海をも動かす月の引力。人間の体にも影響を与えていると考えても何も不思議なことはありません。地球の生き物にとって、月の満ち欠けは生命の営みと深く関わりがあります。

沖縄では、月の暦をもとにした旧暦文化が今も色濃く残っています。沖縄の年中行事の多くは、旧暦に沿って行われます。自然に寄り添い、自然の移ろいを味わう。自然の恵みによって生かされていることへの感謝の祈りが満ちた暮らしが沖縄にはあります。